はす向かいにて

20歳、自分のこととそうじゃないこと

ラブソングにおける2人称の話

LILI LIMIT "Neighborhood"に寄せて

    捻くれたラブソングは、夢に似ている。どうしても叶えたい夢を持ってしまった人間は、その相手に苦しめられては救われて、信じては裏切られたような気分になって、悩み続ける。忘れた振りをする度に思い知らされ、私たちは忙しなく涙を流す。タチの悪い恋愛ってこんな感じかなあ、と思いついたのはもう何年も前のことで、あらゆるラブソングの"君"とか"あなた"のところに積年の夢を思い浮かべているうちに、とうとう捻くれた大人になってしまった。

   LILI LIMITのニューアルバム『a.k.a』が素晴らしい。ポップとしての純度はより研ぎ澄まされながらも、繰り返し綴られる〈暮らし〉〈生活〉というワードには、たっぷりの空気を含んでは空に放たれるような自由さと切なさがあり、楽曲が持つ独特な彩度の低さは寧ろ知らない景色を見せてくれるような気がする。中でも特別な寂しさを感じたのはM-7"Neighborhood"。ここで描かれた失恋はきっと、彼の人生のとっておきだったんだろうな。

(以下 "Neighborhood"より抜粋)

〈ラジオスター僕のラジオスター
君が登場して
僕の心壊していったんだ〉

〈泡沫の恋は酷い甘さだけ残り虫歯が出来た
君のチャートに入りたかった〉

〈ラジオスター僕のラジオスター
君は僕にとって
最後の人になれたら幸せだった〉

    私の人生に土足で入り込んでめちゃくちゃにしたそれを、結局いつまでも嫌いにはなれないのだろう。それならいっそ、夢の職業でも誰かの恋人でも何でもいい。憧れに憧れて生きていける時間が出来るだけ長く続きますように。そんなことを思いながら、私は今日も音楽を聴いている。